太陽の光を遮るカーテンがなびく。
 薄暗い部屋にはランプの光だけが静かに輝く。
 部屋には様々な魔導書が入れられた本棚。
 緑色の液体が入ったフラスコや、透明な液体が入った試験管が乗った木の机。
 私は部屋の中央へと立ち、手に持った魔導書を広げる。
『――――――――』
 私、アリス・マーガトロイドは神経を研ぎ澄ませる。
 通常の人間には聞き取れない言葉を発しながら、精神を集中させる。
 すると足元から光が漏れ出す。
 その光は三角形を二つ合わせ、それを円で囲んでいる六芒星の魔法陣である。
 緑色の光を放ちながら、生きているように蠢く。
 ここまでは予定通り、このままいけばいいのだが。
 順調に進むことに少し不安を覚えるが、そんなことを気にしていては成功しない。
 唱える呪文は大詰めへとなり、気持ちも高まる。
 これで……この気持ちも少しは落ち着くはず。
 ある人物の姿を思い出しながら、手に持つ魔導書を握る力が強くなる。
『――――――――ッ!』
 そして最後の一文を読みきった瞬間、足元に描かれる六芒星が強い光を放つ。
 その強い光に反射的に目を瞑る。
 光が弱まり、恐る恐る瞼を上げる。
 しかし、目の前に居るはずあるモノは無く、先ほど見た六芒星だけが床に広がる。
 失敗……? 準備は完璧だったはずなのに。
 この実験を成功させるため、それなりの日数を費やしたがまさかこんな結末で終わるなんて。
 結果に肩を落とし、魔導書を読み直す。
 たしかに間違えてはいない。だけど何故……。
 もう一回できる時間はある。早くしないとあの娘が来る。
 ふと、背後に何かが居るような気配。
 視線を後方へと向ける。
 ――――黒い何かが、私に襲い掛かってきた。




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