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 今年も後少し。
 今にも雪が降りそうな寒空。
 陽もすっかり沈み、空には雲の隙間から数多くの星が見える。
 私は今、紅白巫女の神社の縁側に座って空を見上げている。
 吐く息は白い。肌寒い。
 すぐ隣の縁側には相棒の上海人形が座っている。
 後ろの居間からは様々な声。
「ねぇ霊夢、もっとお酒は無いの?」
「ああもう! 自分が持ってきたのを飲みなさいよ! 紫!」
「幽々子様〜、飲みすぎですよぉ」
「妖夢ぅ〜あなひゃものみなひゃいよ〜」
「慧音……うぅ……私なんか……私なんか……」
「ど、どうしたのだ、妹紅」
 とても悪酔いした集団が後方で叫んだり泣いたりしている。
 今日は紅白巫女の言い分だと「クリスマスと忘年会を一緒にやっちゃおう宴会」らしい。
 どうせ、大晦日にも宴会するくせに……。
 今は飲みすぎたため、外で涼んでいるのである。
「……ねぇ、アリス」
 呼びかけられる。
 声がする方へと向くと、そこには先ほどまで怒鳴っていた紅白巫女――博麗霊夢が立っていた。
「何? お金はあげられないわよ霊夢」
「違うわよ」
 なんだ、てっきり酒代を請求されるかと思った。
「魔理沙、知らない?」
「魔理沙? そっちに居ないの?」
「居ないから聞いているの」
 同じ森に住んでいる白黒の魔砲使い――霧雨魔理沙の姿を思い浮かべる。
「あ……そういえばさっき、あっち側に千鳥足で行ったわよ」
 なんか酷い悪酔いをしていたなぁ……。
 魔理沙が行った方向を指で示す。
「そう、ありがと」
 霊夢は私が指す方向へと歩き出した。
 そしてまた一人で涼む。
 今年は雪降るのだろうか。降ったら寒いし雪かきとか面倒ね。
「アリス、ここに居たの」
 するとまた背後から声がする。
 聞き覚えのある声がする方向へと首を曲げる。
 そこには一人の頭に兎の耳を生やした少女――鈴仙・優曇華院・イナバが顔を赤色に染めて立っていた。
「鈴仙、顔が赤いわよ」
「えへへへへ……師匠が中々解放してくれなくって……」
 顔を赤く染めた鈴仙が流れるように美しい銀髪を靡かせながら私の横へと座る。
「しかし、永遠亭の住民がここの宴会に来るなんて珍しいわね」
 宴会会場になっている居間へと視線を送ると、そこには永遠亭の住民たちが飲んだくれていた。
「えーりんー、貴女の胸は本当に大きいわねー」
「永琳様〜、私失恋なんて嫌ですぅ〜」
「姫! てゐ! は、な、れ、て!」
 輝夜とてゐに抱きつかれている永琳の姿。
 この面子は滅多に神社の宴会には来ない。
 それが今日は珍しく宴会に来ているのだ。どういう風の吹き回しか。
「いや、私がここに行くと言ったら皆ついてきたの」
 珍しいことね。
「ふーん、そう」
「アリスは、なんでここに居るの?」
「私? 私は飲みすぎたから涼んでいるのよ」
 体が火照ってしまって仕様が無い。
 いつもなら冷たい夜風も、今は涼しいぐらいだ。
「じゃあ、私も〜」
 顔を赤くした鈴仙が肩に頭を乗せてくる。
「ちょ、ちょっと」
「えへへへへへ……」
 頭を私の肩をすりすりとくっつけてくる。
「貴女、酔っている?」
「酔ってないわよ〜」
 絶対酔っている鈴仙は肩から頭を離して、その頭を私の太ももに置くように横になる。
「ちょ、ちょっと鈴仙! やめなさい!」
「アリスぅ〜」
 どうやら耳に入っていないようだ。
鈴仙はすりすりと私の太ももの上で「えへへへへ」と笑っている。
 しかし、この子は本当に可愛いなぁ。
 横になっている鈴仙の頭を撫でる。
 すると突然、鈴仙が頭を上げると立ち上がり、何処かへ歩き出した。
「何処行くの?」
「ん〜? お手洗い〜」
 鈴仙はにへらにへらと笑いながら、覚束ない足取りで歩く。
 ああ、そんな歩き方じゃ……やっぱり。
 鈴仙は縁側にある柱に頭をぶつける。
「あたッ……」
「もう……」
 このままでは不安だから連れて行こう。
「仕様が無いわね、私が連れてってあげるわよ」
「大丈夫だよ〜あははは〜」
 そんな酒で酔った顔で言われても説得力が無い。
 鈴仙の肩を持ちながら神社の縁側を歩く。
 あれ、何処らへんだったかな……。
 神社のお手洗いを探すが、あまり場所を判っていない。恐らくこの辺りだと思うんだけど。
「――――」
「……ん?」
 何か今声が聞こえた。
「ん〜? 何か声が……」
 鈴仙にも聞こえたようだ。
「――――ぁ」
 なんだろう、何処から聞こえてくるのだろう。
 周辺を見回すが、何処から聞こえるか判らない。
「アリス、あの部屋、開いているよ」
 鈴仙が指で示す方向には、襖が少し開いている部屋がある。しかし、そこは灯りもついておらず暗い。
「――――!」
 やはり何か声が聞こえてくる。
 鈴仙も気になっているようで、少し覗いてみることにする。
 悪酔いした誰かがあの部屋で何かやっているのかな……。
 興味心身に開いた隙間から部屋の中を覗く。
「魔理沙……やめなさ、あッ――――そこは――」
「いいじゃないか、霊夢〜」
 部屋の中では予想外のことが起きていた。
 霊夢と魔理沙が交わっているのだ。
「霊夢の胸は可愛いなぁ〜」
 魔理沙は衣服の上から霊夢の殆ど無い胸を嬲る。
「や、やめ――あうッ! 待って、ん――」
 嬲られる度に霊夢は甘い声を上げる。
 顔を朱色に染めながらいつも強気のはずの霊夢は魔理沙になすがままになっている。
 魔理沙は恐らくかなり酔っているのだろう。そのためにいつもより数段強気なのだ。
 すると霊夢の小さな唇へと魔理沙が自分の唇を重ねる。
 何度もお互いをたしかめるような熱い口づけ。湿った音が何度も聞こえる。
「ん……ん……んう……」
 その二人の熱い行為を食い入るように見つめる。
 魔理沙は霊夢の衣服へと手を掛ける。
 そこまで行っちゃうの!?
 これはこれで面白くなってきた。
「……アリス」
 するとこちらに盛り上がっていて存在を忘れていた鈴仙が声を上げる。
「何よ、静かにして、気づかれるじゃないの」
 二人の行為から目線が外せない。鈴仙を軽くあしらっておく。
 後で脅しのネタにして霊夢からお酒を貰おう。
「アリスぅ〜」
「だから何よ」
 しつこく喋りかけてくる鈴仙へと視線を向ける。
 すると鈴仙の目は何かを求めるようにアリスを見つめていた。
 あれ、これは少し不味くないかな。
 一歩あとずさる。
 それを追うように鈴仙が一歩近づく。
「ま……待ちなさい……」
 鈴仙は聞く耳を持たない。
 逃げようとするが、次の瞬間、鈴仙に押し倒される。
 勢いよく床へと倒れこむ。
「ちょ、ちょっと! 鈴仙! 離れなさいよ!」
「アリス……私、アリスのことが……」
 ダメだ、かなり酔っ払っているようだ。とにかくなんとかせねば。
 鈴仙が口づけをしようと顔を近づけてくる。
 それをさせまいと必死に手で防ぐ。
 上海を使って離そうとするが、一体だけでは無理なようだ。
 すると胸を揉まれる感覚。
「こ、こら!」
「アリスの胸、柔らかい〜」
 鈴仙が私の胸を揉むたびに何か変な感覚が伝わる。
 ここまで酷い悪酔いはどうしたものか……後日絶対言ってやる。
 次にスカートの中へと手を入れてきた。
 鈴仙の手が私の足を触り、ゆっくりと上がってくる。
 こ、これはまずい!
 身の危険を感じ、反射的に鈴仙の首の後ろに手刀で叩く。
「はぶッ!!」
 短く叫んで、鈴仙は気絶する。
 危機は去った……。
 安心して一息吐く。
 そして目が合う。
 こちらを見下ろす霊夢と。
「アンタたち、何をやっているの……」
 衣服がと髪の毛が乱れた霊夢が冷たい目でこちらを見下ろしている。
「え……いや……」
 目が泳いでしまう。
「……まさか、覗いていたの?」
「し、仕様が無いじゃない! 見えちゃったんだから! というかこんなところでやっている方が悪いんじゃない!」
 見事なまでの逆上。
「な……あ、アンタたちが勝手に覗いて、勝手にいちゃついていたんでしょ!」
「この子が勝手に襲い掛かってきたんだから、私はやっていないわよ!」
 お互いプライドのため、怒鳴り合う。
 私がこの子と出来ているなんてデマが流れてしまったら、どんな嫌味や茶化されるか判ったものじゃない。
「そ、それより魔理沙はどうしたのよ! 貴女の相手は!」
「相手って言うな! 魔理沙が勝手に襲い掛かってきたのよ! そうしたら部屋の外から音がしたから一発首を叩いて気絶させたわよ!」
 顔を赤く染めながら霊夢は反論した。
 向こうも襲い掛かってきたのか。そのわりには無抵抗だった気がするが。
 まぁ、そんなことより。
「……ねぇ、お互い相手が勝手に襲い掛かってきたんだから、事故ってことで済まさない?」
 とにかく、この場をこちらに害が無い状態に傾けなければ。
 向こうもこの状況を穏便に済ましたいはずだ。
 ならば事故とすれば丸く収まるはず。
「……そ、そうね、これは事故よね、事故」
 霊夢もこの条件を飲む。
「そうそう……」
「うん、事故よ……事故……」
「ははははは……」
「ははははは……」
 とにかくこの場は丸く収まった。
 すると空からチラホラと小さな雪が降り始める。
 後は鈴仙が覚えていなければいいが。
 この子は、いつもはおっちょこちょいで極度の人見知りの癖に、お酒を飲むとこんな積極的になるなんて……今後気をつけよう。
 そして、アリスの憂鬱なひと時は終わった。



 頭が痛い。
 昨日は飲みすぎた……。
 師匠に無理やり飲まされて、何杯目かから記憶が無い……。
 それから首に痛みがある。
 酔っている間に何処かに打ち付けたかな……でもなんで首?
 何かその間に大事な出来事を忘れているような……。
 それで、なんで私はアリスの家で寝ているのだろうか?
 目が覚めたらアリスのベッドの上に居たのだ。
 うーん、何があったのだろうか。
 頭が覚醒しないまま、ベッドを抜け、アリスを探す。
 寝室から出て、家の食堂へと向かう。
 すると台所で朝食を用意しているアリスとその傍を浮く上海人形の姿を発見する。
「……あら、起きた?」
「え……うん」
 よく判らないがアリスへとここに居る理由を聞く。
「ねぇ、私、なんでアリスの家に居るの?」
 するとアリスは眉毛を寄せて、こちらへと向く。
「酔いつぶれた貴女をわざわざ私が運んだのだから感謝しなさいよ!」
「へ……? なんでアリスの家に……? 師匠は?」
 一緒に来ていたはずの永遠亭の住民はどうしたのだろうか?
「貴女の師匠は酔いつぶれた他の二人を連れて帰っていったわよ。それで酔いつぶれた貴女を私に任せて、なんのつもりよ!」
 怒ったように叫んだ後、再び上海を操り朝食を作り始めた。
 姫様とてゐも酔いつぶれちゃったのか……でもなんで師匠はアリスに私を任せたのだろう……。
「そういえば鈴仙。貴女、昨日のこと覚えている?」
 昨日のこと?
 昨日のことなんてまったく覚えていないのだが……。
 何か凄い怖い顔でアリスがこちらを見ている……なんだろう……。
「いや……何も覚えていないけど……」
「本当に?」
「う……うん」
「そう、よかった……」
 何かを安心するようにアリスは胸を撫で下ろす。
 本当に何かあったのだろうか。
「ねぇ……私、昨日何かしたの?」
「え? い、いや……な、なんにもしてないわよ!」
 明らかに動揺した素振り。
 本当に何をしたのだろう……。
「いいから、椅子に座りなさい、朝食できたわよ」
「うん」
 まぁ、多分そこまで大事じゃないと思うから、気にしなくってもいいかな。
 アリスに促されるまま食卓に着く。
 すると上海が私の目の前にこんがり焼けたパンとハムが乗った皿を置く。
 そしてアリスが野菜の盛り合わせを置くと対面する椅子に座る。
 あれ、今気づいたけど……私、今アリスの寝巻きを着ている。いつの間に着替えたのだろう。
「ねぇ、アリス、私の服は?」
「ああ、あのまま寝させる訳にもいかなかったから、着替えさせたわよ。貴女の服は寝室に置いてあるから後で着替えて」
「うん、判っ――」
 あれ、着替えさせたってことは、私の裸を見られた?
 そんなことを考えると恥ずかしくなり、顔を赤く染める。
 女の子同士だけど何故かアリスに裸を見られると恥ずかしい。
 いや、それよりアリスと一緒に居ると、とても楽しく、ドキドキする。なんだろうこの気持ちは。
「どうしたの? 鈴仙」
 アリスがこちらを見ている。
「いや! なんでもないよ! ……あれ……何か思い出しそうな」
 頭の中にボーっと何かが蘇ってくる。アリスと何か……それから博麗の巫女と白黒の魔砲使いを……。
「いいから! 思い出さないでいいから!」
 必死に何かを思い出させるのを止めるアリス。
 うーん、何を必死に止めるのだろう。気になる。うーんと。
「だから! 思い出すなぁッ!」
 テーブルの上にあったパンを、アリスは勢いよく私の口の中へと詰め込んだ。
「ふごッ!? ふごふご!?」
 何!? 何をするのよ!?
「いいから昨日のことは忘れなさい! あんなこと無かったことにするのよ!」
 だからなんなのよ!
 だが、こんな風に騒ぎ合える友達が居ることは嬉しい。
 アリスと居る時間が永遠亭に居る時と同じように楽しい。
 しかし、たまに変な感情が生まれる。
 なんだろうこの感覚は。
 悪くは無い感覚だ。
 私は、アリスと居るのが楽しい。



 後数日で年は明ける。
 このお話は幻想郷で起きた、小さな小さなお話。
 それでもその小さなお話は、関わった者にとっては大きく、そして小さなお話かもしれない。
 それは誰も判らない。
 その事実が判るのは、もっと先の話かもしれない。
 だから、生きている。
 幻想郷――世界から切り離された世界。
 日々は確実に過ぎ、出会いと別れを繰り返す。




 もしよかったら感想をどうぞ。


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